人生の全ての問題を解決する知恵
          
 「鏡の法則」
第3章(人生の宿題は自分で解決できる)

第2章の続きです。最初にコチラに入ってしまった方は第1章からお読みください



A子さんは、勇気を出してお父さんに電話をかけました。

形ばかりの感謝を伝えただけなのに泣き崩れた父親。
その父親の嗚咽する声を聞いて、A子の心にも大きな気づきが生まれました。
「父は自分のことを愛したかったんだ。親子らしい会話もたくさんしたかったんだ。
しかし、私は父の愛情をずっと拒否し続けてきた。」



「あと1時間くらいで、○○○(息子)が帰ってくるな。」
そう思った時に、電話が鳴った。

出てみるとB氏であった。



B氏「どーも、Bです。今、40〜50分くらい時間ができたので電話しました。
   さっきは、次の予定が入ってたので、お話の途中で電話を切ったような気がしまして。」

A子「実は私、父に電話したんです。電話して本当によかったです。
   ありがとうございました。Bさんには、言葉にならないくらい感謝しています」


A子は、父とどんな話をしたかを簡単に説明した。

B氏「そうでしたか。勇気を持って行動されて、よかったですね。」

A子「私にとって、息子がいじめられてることが最大の問題だと思っていましたが、
   長年父を許していなかったことの方が、よほど大きな問題だったという気がします。
   息子の問題のおかげで父と和解できたんだと思うと、
   息子の問題があってよかったのかな、という気すらします。」

B氏「息子さんについてのお悩みを、そこまで前向きに捉えることができるようになった
   んですね。
   潜在意識の法則というのがありましてね、それを学ぶと次のようなことがわかるんです。

人生で起こるどんな問題も、実は、自分に何か大切なことを
気づかせてくれるために起こるんです。
つまり偶然起こるのではなくて、起こるべくして必然的に起こるんです。
ということは、自分に解決できない問題は決して起こらないのです。
起きる問題は、すべて自分が解決できるから起きるのであり、
前向きで愛のある取り組みさえすれば、後で必ず『あの問題が起きてよかった。
そのおかげで・・』と言えるような恩恵をもたらすのです。


A子「そうなんですね。ただ、息子の問題自体は何も解決していないので、
   それを思うと不安になります。」

B氏「息子さんのことは、まったく未解決なままだと思っておられますね。
   もしかしたら、解決に向けて大きく前進されたのかもしれませんよ。
   心の世界はつながっていますからね。
   原因を解決すれば、結果は変わるしかないのです。」

A子「本当に息子の問題は解決するんでしょうか?」

B氏「それは、あなた次第だと思いますよ。さて、ここで少し整理してみましょうか。
   あなたにとって、息子さんのことで一番辛いのは、息子さんが心を開いてくれない
   ことでしたね。親として、何もしてやれないことが情けなくて辛いとおっしゃいましたね。
   その辛さをこれ以上味わいたくないと。」

A子「はい、そうです。いじめられてることを相談もしてくれない。
   私は力になりたいのに、『ほっといて!』って拒否されてしまう。無力感を感じます。
   子どもの寂しさが分かるだけに、親として、何もしてやれないほど辛いことはありません。」

B氏「本当に辛いことでしょうね。ところで、その辛さは、誰が味わっていた辛さ
   なのか、もうお分かりですよね。」

A子「えっ?誰がって・・・(しばらく沈黙)」


その時、A子の脳裏に父の顔が浮かんだ。
そうだ!この耐えがたい辛さは、長年父が味わい続けたであろう辛さだ。
娘が心を開いてくれない辛さ。
娘から拒否される辛さ。
親として何もしてやれない辛さ。
私の辛さといっしょだ。
この辛さを、父は20年以上も味わい続けたのか。

A子のほほを涙が伝った。


A子「わかりました。私は、私の父と同じ辛さを味わっていたんですね。
   こんなに辛かったんですね。父が嗚咽したのも分かります。」

B氏「人生で起こる問題は、私たちに大事なことを気づかせるべく起こるんです。」

A子「あらためて父の辛さが分かりました。息子のおかげで、分かること
   ができたんだと思います。息子が私に心を開いてくれなかったおかげで。」

B氏「息子さんもお父様もあなたも、心の底ではつながっています。
   お父様に対するあなたのスタンスを、あなたに対して息子さんが演じてくれたわけです。
   そのおかげで、あなたは気づくことができた。」

A子「息子にも感謝したいです。『大事なことに気づかせてくれて、ありがとう』って気持ちです。
   今まで、『どうしてお母さんに話してくれないの?』
   って心の中で息子を責めていました。」

B氏「今なら、息子さんの気持ちも理解できますか?」

A子「そうか!私が子どものころ、口うるさい父がイヤでした。
   いろいろ口出ししてきたりするのがイヤでした。今考えてみれば、それも父の愛情からだっ
   たんでしょうが、当時は負担でしたね。今、息子も同じ思いなんだと思います。
   私の押し付けがましい愛情が負担なんだと思います。」

B氏「あなたが子どものころ、本当はお父さんに、どんな親でいてほしかったんでしょうね?」

A子「私を信頼してほしかった。『A子なら大丈夫!』って信頼してほしかったです。
   ・・・(しばらく沈黙)。私、息子を信頼していなかったと思います。
   『私が手助けしないと、この子は問題を解決できない』と思っていました。
   それで、あれこれ問いただしたり、説教したり、・・・。もっと息子を信頼してあげたいです。」

B氏「あなたは、お父様の辛さも理解し、息子さんの辛さも理解されましたね。
   では次に、ご主人とのことに移りましょう。
   朝お電話をいただいた時に、『あなたの大切な息子さんが人から責められてしまう原因は、
   あなたが身近な誰かを責めてしまっていることです』とお話したのを覚えていますか?」

A子「はい、覚えています。主人を尊敬できないという話をしました。」

B氏「ではもう一度、ご主人に対してどんなふうに感じておられるか、話してもらえますか?」

A子「どうしても、主人に対して、『教養のない人』とか『思慮の浅い人』というふうに見て
   しまうんです。息子の問題に対しても、私がこれだけ悩んでるのに、根拠なく楽観的なんです。
   それで私は、主人に対しては、グチこそはぶつけますが、ちゃんと相談したりすることは
   ありません。主人がアドバイスなどしてきても受け付けられないんです。」


ここまで話しながらA子は、自分の夫に対するスタンスが、父親に対して
取ってきたスタンスに似ていることに気がついた。


A子「私が父に対して取ってきたスタンスと似てますね。」

B氏「そうなんです。女性の場合、父親に対してとってきたスタンスが、
   ご主人に対してのスタンスに投影されることが多いんです。
   ところで、お聞きしていると、ご主人は息子さんのことを信頼されているようですね。」

A子「あっ、そうですね!そうか、主人のそういうところを見習うべきだったんですね。
   息子は父親に対しては、けっこう本音を言っているみたいなんです。
   息子は父親から信頼されてると思うから、父親には心を開くんですね。
   私は主人のよいところをまったく見ていませんでした。」

B氏「なるほど、そんなことを感じられたんですね。さて、では宿題を差し上げます。
   やるかどうかは自分で決めてくださいね。
   今日の午後、『父に感謝できること』と『父に謝りたいこと』という2種類の紙を作ってもら
   いましたよね。その紙に、お父様に感謝できることと謝りたいことを、書き出せるだけ
   書き出して下さい。紙は何枚使ってもOKです。

それが終わったら、もう一つ紙を用意してください。その紙のタイトルは、『父に対して、
どのような考え方で接したらよかったのか?』です。これは過去のお父様との関係を
後悔するために書くのではありません。
これからのご主人との接し方のヒントが見つかるはずです。

そしてもう一つ、息子さんが夜眠られたら、息子さんの寝顔を見ながら、心の中で
息子さんに『ありがとう』を沢山ささやきかけてください。どうですか、やってみたいですか」

A子「はい、必ずやってみます。」


電話を切って間もなく、息子が帰ってきた。
息子はランドセルを玄関に投げると、いつものようにグローブとボールを持って、公園に行った。
「昨日、友達に追い出されたというのに、この子は、また公園に行くの?」
A子の心は心配な気持ちでいっぱいになった。

A子は、その心配な気持ちをまぎらわすように、宿題に取りかかった。


父に対して感謝できることがたくさん思い浮かんだ。

・現場監督のきつい仕事を続けて、家族を養ってくれた。
・私が子どものころ、夜中に高熱を出したことが何度かあったが、その都度、車で救急
病院まで連れて行ってくれた。(肉体労働をしていた父にとって、夜中はしんどかったはず)
・私が子どものころ、よく海や川に連れて行ってくれて、泳ぎを教えてくれた。
・子どものころ私はメロンが好きだったが、毎年の私の誕生日には、メロンを買って帰って
来てくれた。
・子どものころ近所のいじめっ子にいじめられていたことがあったが、
その子の家に抗議しに行ってくれた。
・私は私立大学に入ったが、文句を言わず学費を出してくれた。(当時のわが家にとって、
大きな負担だったはず)
・私の就職先が決まった時に、寿司を出前で取ってくれた。(とても豪華な寿司だった。
その時私は「寿司は好きじゃない」と言って食べなかった。父はしょんぼりしていた)
・嫁入り道具に、高価な桐のタンスを買ってくれた。


「感謝したいこと」に連鎖して「謝りたいこと」も浮かんできた。
「感謝したいこと」と「誤りたいこと」を書きながら、涙が浮かんできた。

「私は、こんなにも愛されていた。反発する私を、愛し続けてくれていたんだ。
許せないという思いにとらわれていたから、その愛に気づかなかったんだ。
そして、こんなにも愛してもらいながら、私は父に何もしてあげてない。
親孝行らしいこともほとんどしていない。」


自分が父親の仕事を尊敬していなかったことにも気づいた。
父親の現場監督の仕事に対して、「品がない」とか「知的でない」とか思っていた。
父親が仕事を頑張り続けてくれたおかげで、自分は大学まで行かせてもらえたのに。
そのことを初めて気づいた。
父親の仕事に対して、尊敬心と感謝を感じた。

そして今、自分の夫の仕事に対して、「知的でない」というイメージを持っている。
自分の夫に対する「教養がない」という嫌悪感をともなうイメージは、父に対して
持っていたイメージとそっくりである。
自分は、夫に対しても感謝できることがたくさんあるはずだ。


そんなことを考えながら、続いて、「父に対して、どのような考え方で接し
たらよかったのか?」というタイトルの紙を用意した。

これについては、すぐに文章が浮かんできた。

「父の言動の奥にある愛情に気づくこと。
 自分が不完全な人間であるように、父も不完全で不器用な人間であることを理解すること。
 してもらっていることに感謝をすること。
 愛してもらうだけではなくて、自分から愛すること(父を喜ばそうとすること)。
 そしてその上で、イヤなことはイヤと伝えて、おたがいが居心地いい関
 係を築くこと。」


これはまさに、これから夫に対してするべき考え方だ、と思った。

働いてくれている夫。
自分の人生のパートナーでい続けてくれている夫。
自分は夫に対して感謝することを忘れていた。

夫に対して、こんなに素直な考え方ができるのは初めてかもしれない。
これは父に感謝できたことと関係があるのかもしれない。
今日は夫に感謝の言葉を伝えよう。


そんなことを考えているうちに、外が薄暗くなりかけていることにA子は
気がついた。

思えば、今日は家事らしきことをほとんどしていない。
朝の9時ごろB氏に電話してから、1日中自分と向き合っていた。

「晩ご飯の用意、どうしよう?」
そう思った時に、息子が帰ってきた。


息子「ねえ、お母さん聞いてよ!」

A子「どうしたの?何かあったの?」

息子「C君知ってるでしょ。実は昨日、C君に公園でボールぶつけられたんだ。」

A子「あっ、あー、そうなの。C君って、あなたを一番いじめる子だよね。」

息子「さっき公園から帰ろうとしたらC君が公園に来てさー。で、『いつも
いじめててごめんな』って言ってくれたんだ。」

A子は「そうだったの!」と言いながら、まるで奇跡でも体験しているよ
うな気持ちになった。
こんなことが偶然起きたとは思えなかった。
そして、心から感謝の気持ちが湧いてきたのだった。



続きます、次が最終章になります(70年間で一番幸せな日) 
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