応用範囲がバツグンに広い基本技

マイオファシル・リリースは、背部筋の緊張や拘縮をほぐす筋骨格神経の施術には最も基本的で重要なテクニックといえます。

腰痛、頭痛、肩こり、脚部痛、手足のしびれ、内臓不調、不定愁訴に至るまで、ほぼこのテクニックを施します。
また、施術を行いながら筋肉の状態や体調を触診できることも重要です。

シンプルそうで最も奥深い手技

人間の筋肉で一番負担がかかり、コリを生じるのは脊柱起立筋群と呼ばれる背部の筋肉です。
この他、上半身では背中上部から肩、後頭部まで付着している僧帽筋もコリを生じやすい場所です。

これらの筋肉をリリース（ほぐし）をすることが施術の基本となりますが、体の広範囲にわたるので、カウンターストレインやマッスル・エネルギーなどのテクニックで解放するのは困難で、拇指による押圧が最も有効な方法となります。

ただし拇指による押圧といっても、今までのあん摩やマッサージ、指圧、カイロプラクティックなどの類似技とはまったく違うものだと思ってください。

基本はソフトにゆっくり

筋肉には起始・停止という始めと終わりがあるので、どこからどこまで付着しているのか確認して、その筋に沿って押圧していきます。
筋肉を確認したら、拇指の指腹を硬くなった筋肉の中心に垂直に当てます。
拇指を当て、軽い圧力を加えたまま数秒くらいすると、筋肉が緩んでくるのが感じられます。
そのままさらに、ゆっくりと少しずつ圧力を深いところまで押し込んでいくと、また硬くなった筋肉に行き当たります。
そこでまた、数秒の持続圧を加えると、その筋肉が緩んできます。
これを筋肉の筋に沿って緩めていきます。
ゆっくりと指の頭で筋肉の緩みを感じながら、数センチ刻みで進めていきます。

素早くシャープに圧力を加えると弱い力でも痛みを生じますが、徐々にソフトに圧力を加えていけば、強い力でも決して痛くはありません。
また、毛細血管などの組織も破壊しないので、施術後のいわゆる揉み返し現象も起きません。

自発的な回復を促すことが大切

筋肉は非常に年代差、個人差があり疾患の状態も千差万別です。
お年寄りの筋肉と若い人の筋肉を比べれば、お年寄りの筋肉は退化して縮み始めています。
しかし、若くてもあまり運動しない人の筋肉は退化して脂肪が多くついてくるでしょう。
皮下脂肪や体脂肪が多い筋肉は、良い筋肉とはいえません。

良い筋肉は

触ったときには柔らかく、力を入れると鋼鉄のように硬くなります。
以前テレビで横綱・貴乃花の体を触った観客が「マシュマロみたい」と言っていましたが、彼のような筋肉が良い筋肉の代表例です。

しかし女性などの場合、皮下脂肪で柔らかく感じることがありますが、その下の筋肉まで触診してみないと本当のところは分かりません。
その判断には経験を必要とします。

筋肉の拘縮について

ちょっとスポーツや仕事をやり過ぎて筋肉にハリが出た一過性のものと、長年蓄積された疲労から筋肉が拘縮したものでは状況が違い、処置法も変わってきます。
一過性のものであれば、軽く揉む、たたくといった方法で症状が軽減されるでしょう。
しかし長年拘縮が続いてる筋肉に対しては、前途した方法で丹念に解放するしかありません。

筋肉が硬いからと強い力で押したり、揉んだりしても、一時的に良くなった気はしても決して筋肉は解放されていないのです。
それどころか、強い力をシャープに加えれば反射神経が反発して筋肉はよけいに硬くなり、拘縮を増すことになります。
このようにして硬くなった筋肉を処置するのは、最も手間がかかります。

また、後頭部と首の筋肉にタオルなどを当てて強く揉む方法を使う方がおられますが、首の筋肉を強く揉むのはよくありません。
首の筋肉は繊細で重要な神経が絡んでおり、皆さんが考えるより、はるかに微妙で複雑なものです。

いずれにしても、筋肉が自発的に解放されるような処置法を取らなければ、再発を繰り返すことになります。

繊細で確かな人間の手